動機
日本のオーダーメイドでは購入の実例が結構あるけれども、まだウェブの通販で、イギリスでノーフォークジャケットを買った人はいない模様なので、やってみたいというのがひとつ。
また、ここは静岡県富士市。田舎です。田舎に合うファッションは、皆着ているダウンジャケットだけなのか?という素朴な疑問を得たときに、なんとイギリスには田舎の服があるじゃあないか、となって。これはローカルとローカルがグローバルにつながって面白いよね、と感じたのです。目指せ、カントリージェントルマン。
「我らビクトリア朝の人間」そのままであるというM. フーコーの議論はここでは見なかったことにしましょう。あくまでブリコラージュのひとつとしての交換、お買い物。それでは意外にも課題山積だった本論です。
最初の課題
最初の課題。それは、Lovat社のEttrick/Kirkton Tweedsが日本のLサイズに合うかどうか、です。
今回私は、返品不可の特別なツイード生地を選びました。それがLovat社のツイード生地で、ジャケットの550と、トラウザーの951です。問題は、それを日本のLサイズに合わせると、幅が変わってきちゃう可能性があるので確認しなければならなかったということです。
最初は、Overseas(海外への送付)が可能かどうか、またサイズは44と42のどちらが日本のLサイズに近いか、近い方を買いたいという旨を問い合わせたのですが、以下のようにオーダーメイドにしていただくことができました。
担当者はPさん。ディレクターさんでした。Pさんはとても紳士な対応をされる方で、その文面はまさに英国紳士の鏡!みたいな方でした。Pさんは「あなたのおっしゃるように、イギリスには日本のLサイズに相当する服がありません。そこで、Lサイズに合わせて服を作りたいです」と。ええっ、そうなるのか。熱入ってるなあ、と。
それで早速、Pさんは「The Mill」に問い合わせ。これは、ツイード生地の織物工場のことです。これで数日かかって、結果的に「日本のLサイズに合わせて作れるよ」とのこと。さらに、「しっかり合わせたいからサイズを教えてください」と指示を受けます。それをデザイナーさんとカッターさんに伝えて、はい大丈夫、となりました。
ただしオーダーメイドなので、完成は来年1月になるということを確認。
そういうわけで、最終的に、なんと日本のLサイズ、というより私の体型にあわせて、上下のジャケットとトラウザーを、服にちゃんとあったツイードのパターンのワイズ(幅)で作るということになりました。え、既製服じゃなかったの?とおもいますが、この時点でオーダーメイドになりました。価格はそのまま。こうして最初の課題は解決しました。
2つの問題
1. PayPal経由でのVISAカードがリジェクトされる問題
これは、会社の昼休みに、三井住友VISAカード(カード会社)に電話してセキュリティを一時的に解除してもらうことで完結しました。
2. Heightの解釈を間違えた
ジャケットの長さを入力するところを、誤って私の身長を入れてしまいました。これはPさんの神対応でなんとか修正できることになりました。英語って難しいですね。危うく前が180センチもあるよくわからないものが出来上がってしまうところでした。こういうものは、気がついたらすぐ修正です。
その間に天皇の即位式などがあり、その日の富士山の写真を私が送って、「インスピレーションの湧く写真をありがとう、こういうところで生活なさっているのですね」なんていうやりとりをしながら、ペイメント(支払い)。無事に完了して、領収書が添付され、Pさんからは「トラウザーとジャケットが完成したら連絡します」とのこと。
さらなる問題がふたつ発生!
で、さっそくまたサイズに起因するトラブルが。Pさん曰く、デザイナーさんとカッターさんが送ってきた資料によると、私が提示したジャケットの長さのサイズではノーフォークジャケットのベルトとポケットが入りきらない、と。これは、私がポールスミスのテーラードジャケットから採寸した値をそのまま送ったのが原因だと思うので、ごめんなさいして、Purdeyで買った79cmのシャツに合わせて欲しいという旨を伝えて、あとは適当にやっといてよといって解決。
また、トラウザーの方は提示したサイズでは「too baggy(ぶかぶか)」になるとの連絡が。これは、スリムフィットがいいよ、という提案を受け入れて解決。
オーダーメイド、私のとらえ方としては問題が起こるのはエキサイティングなのですが、なかなか難しいですね。
The issue was occurred perhaps because I took the sizes by Paul Smith's Jacket (Japan's limited line named "Paul Smith Collection"), and that is not a Norfolk Jacket, of cause. I am a clumsy and dunce man, umm, haha.
見えてきた課題とメリット
まず、当然ですが、イギリス相手の場合には、全部英語でやり取りできなければいけません。正確に文意を読み解き、それを言い換えて英語で表現し、確認ができたことを伝えるというビジネスライクなやりとりになります。まあでもこれは、カゴに入れるだけのショッピングならそこまで必要ないかもしれません。
そして、クレカがないとダメです。海外通販ではどこもペイパルかVISAを使うことになるでしょう。
メリットは、ふたつあります。
ひとつは高いコスパ。日本のテーラーでオーダーメイドでしか作れない、それもジャケットだけで10万円はする代物を、送料込みでも半額以下で購入できること。同じ値段なら、トラウザーとウエストコート(木こりのあれ)も頼めてしまいます。まさに「抜け穴」です。ただし、ポンドは殺人通貨と呼ばれるほどレートの上下が激しい通貨です。そこは自分で感覚をつかむしかありませんが。
なにより、Beaver Of Boltonが宣誓するように、Made In England(かつMade In Britainでもある)の誇り高い技術で作られた本場の本物を発注できるということ。どんなに本格的なものを日本で作ろうと、ネイティブで作ってるものには、真似できないアウラがありますから。
結論。品物に満足する。
英語覇権状態はますます進むのですが、逆にとらえれば、英語ができると世界がつながってくるということでもありますね。旅行をしなくてもいい。テクノロジーの発展や変化により、そういう時代になってきたのです。あの頃、2008年にVocaloidとロードローラーで私が見た、見せてもらっちゃった「未来」です。
カードがないと決済はだめで、お金のやりとりはペイパルが原則。これもちょっとばかし見た厳しい「未来」です。あの頃は若くて、元本になる信用も自動車運転免許もカネも親もコネもなかったから。今はボカロ曲のデータ販売も解禁されてきているようなのですが、当時はそういうのは投げ銭含め「黒」でしたからね。みんなやってたけど。私には商業的センスで法や規範を犯す勇気がなかったのです。世の中にはタイミング的なものがあります。
そこへきて、各種商品を扱ういわゆるECサイトがぽつりぽつりと、海外でも出来始めています。ECだけではなくて、様々な動きに、英語ひとつでコミットしていける時代が始まっていると考えられます。「私は旅行が嫌いだ」。でも英語圏での買い物をしたのでした。
話は逸れましたが、ほかにもBooksterというウェブサービスもあります。こちらは事細かくスーツやコートのオーダーができるウェブサービスです(英語必須)。狩り用の銃を扱っているPurdeyさんでは、タウン用のシャツが安く買えます。こちらも興味のある方はぜひチェックしてみてください。ちなみにロンドンのPurdeyで既製品のシャツ買ったら、火曜に頼んで金曜には届きました。