2011年10月22日土曜日

UTAU SONIC

UTAU SONIC(10月9日渋谷aube)に行ってきました。

道に迷いました。すっごい疲れてようやくたどり着いた感じでライブ見てました。

大変興味深かったことがあります。入場前まず「お目当てのバンドさんは?」という定番の質問に僕は答えられませんでした。そういえば近い知り合いのライブに行ったらチケットをあらかじめ買っているので、そのバンドの名前を答えるんですよね。で、同じところでかなりの人が同じように「おおっ」ってなるのは、あんまり内輪な感じではないイベントということなんだろうなと。

前日に、僕は世田谷で大学の先輩とちょっとすりあわせしておりました。元箱庭の室内楽というバンドでベース、現ANDAでPAもなさっている西川さんです。前後してTwitterでも問題になっていたのですが、ライブハウスが客ではなくバンドからお金を取ってしまう構造の問題をちらっと話しました。

ところが、うたそには当日40、最終的に300満員という状態で、内輪完結にはなりません。あくまで参考ですが、僕が盛り上がっていた頃参加させていただいたKDN、ボーカロイドのKAITOを軸に据えたイベントでは、やはり300でした。イベントの性質が違うものの、こういった文化は内輪ではなく、離散していたものが一気に集うような感じなんですね。

そして収益がでているはずです。それに見合うライブアクトが展開されていました。むしろ安い。

いろんな捉え方があると思いますが、こういった非ー真正とされるようなカルチャーが、もっとがんがん広がって、ときに薄まって誤解を招いて別の道が開け、融合して、メインカルチャーを駆逐する、そんなワクワクする可能性が見えて、そして、こんなことやってるのは我が国と、ほんの一部の変態UKピープルだけなんです。素敵な時代に生まれてきてよかったです。

2011年5月16日月曜日

【雑記】 管理不可能なネットワークでも音楽は殺されない

■管理不可能なネットワーク
管理不可能なネットワークで音楽は生き残ることができるか、つたない形ですが丁寧に考えていきます。音楽を含め、少し広くなるとビデオ、PVなどの映像、少し先にはテキスト(不倫チャットや機密資料など)で、管理不可能なWinnyに流れると取り返しが付かない、セキュリティに問題がある、そうマスメディアでは報道されておりました。しかし情報流出の問題とは別に、著作権の問題というタテマエに隠れた、コンテンツの収益化の部分に影を落としていたと、以前から考えておりました。


『Winnyの技術』
WinnyのようなPureP2Pネットワークと、Webに代表されるクライアント/サーバ方式(金子『Winnyの技術』P14を参照)、そしてBit Torrentのようなハイブリッド方式にあって、音楽はどうなるだろうか、という疑問です。47氏は「管理不可能」であると商業的にならないということをGLOCOMでおっしゃっていました。濱野智史さんが報告なさっているこちらから、少しWinny後の金子さんの考えを探ってみます。 


最後に金子氏は,次世代P2Pシステムのための課題を二つ挙げている.第一に「Winnyはオープンシステムにならないのか」という問題,第二に「P2Pシステムは管理できないのか」という問題である.


ここでは、主に後者の疑問「P2Pシステムは管理できないのか」という部分を問題として考えたいです。金子さんはこの管理できないことに関して、以下のように考えていたようです。

第二に,P2Pの管理可能性の問題である.先述したように,純粋なP2P(ピュアP2P)では任意のノードがダウンしてもネットワーク全体に影響を及ぼ さないため,耐障害性は強いとされている.しかしこれは裏を返せば,管理可能性が弱いとも言えるのだ.例えば,個人情報を含む名簿ファイルなどが Winny上に流出した場合,これを管理者が一挙に削除するような仕組みは存在せず,永遠にファイルが流通し続けてしまう.実際,海外のP2Pファイル共 有ソフトウェアをめぐる裁判では,純粋なP2Pのサービスは管理者不在であるため,開発者や運用会社の責任は追及できず,ユーザーへの裁判が集中してい る.しかし金子氏は,この問題は技術的な欠陥に過ぎないと強調する.金子氏は,ピュアP2Pでも管理可能性を実現するアイディアがあるが,現在刑事裁判で係争中のためWinnyの改良に手をつけることができないと述べ,講演を締めくくった

どういうことかというと金子さんは、耐障害性に強い代償として管理可能性が弱いピュアP2Pという認識があるけれども、それは技術的欠陥であり、管理可能性を実現するアイデアがある、と述べ、管理不可能性は欠陥と位置づけています。その後、金子さんはSkeedCastというハイブリッドP2Pを開発されることになります。

つまりは、欠陥であり、そこから管理可能であればコンテンツを流通させることが可能である、こういうことです。しかし僕は、どうやら管理可能なWinnyで曲がやりとりされても、収益化は可能であった、いや別のスキームの台頭によって実現可能になった、と、こう考えます。
 
■エア本さんのムーブメントに学び、走らさせていただいてます
ボカロに前後して、エア本さんが現れました。これは収益は問題となりませんが、一度アップロードされたものはウェブ上でも拡散し、消すことは難しいのだということを教えてくれました。消すと増える、という言葉は、このことを大変上手く示しているでしょう。つまり、管理可能なクライアント/サーバ方式のWeb上でも、愛、いや信心さえあればいくらでも、コンテンツは残り続けるということです。とくにニコニコの運営が怠惰であったということではなく、消してもパワーアップして、もはや人気はうなぎのぼり。ここで、管理可能であれば商業的に収益を上げられるという既成概念に対し圧倒的な矛盾が生じたのです。これは、わずかな素材で実質管理不可能性をWeb上に作り上げた、革命(マイレボリューション)でした。


■ボーカロイド
ボカロで僕は直接にいろいろな事例を見た後、困難な状況ではあったけれども、なんとしても収益化(マネタイズ)まで行かないと駄目だ、と考えていました。なぜそう考えたのかは、よくわかりません。しかし、ネットが大好きで、コンテンツと称されるものを収益化することは難しいと知っていましたから、収益化までは行こうと考えました。


ここで、明確に二つの方法が考えられます。ひとつは、同人という形で出来上がりつつあったマーケットに出す方法。もうひとつは、表の作法でCDなどになって出る方法


個人的な立ち居地として簡単に説明させていただくと、僕は根っから同人をやっていました、という人ではなくて、僕自身も、やってしまって大きくなったことが興味深かったのです。そして、こうした状況で、遠く東京中心である同人ではなくて、地方から表に出したときに、どうなるのか。そのとき、たとえばPureP2Pのような俗に「管理不可能」とされるネットワークにあっても商業と並存し得るのか、考えていました。しかし、実際には同人の状況をからめて、この疑問を解決してみたいと考えます。


■ソーシャルと同人
初期にいざこざはありましたが、2007年、同人系の方々は「はつねぎ」というSNS(同じではありませんがmixiのようなものです)を通じてコミュニケーションやコラボを行っていたようです。同人というと、さらに以前はオタクの楽しみだと捉えられておりましたが、バラバラではなく、タテマエとして趣味と同好の方々であり、元々ネットワークは大変に強いです。イベントでは名刺を必ずいただきます。大抵の場合、東京か、その周辺でこうしたイベントは行われていて、集まった方々はほぼ東京中心という印象を持ちました。


こうした中で、コンテンツの作り手が独自のネットワークを築き、次にSNS「にゃっぽん」と、前後してピアプロが生まれました。それからひと月のうちに、ロードローラーが出てきました。自分の曲をニコニコで見ていると、客層は最初は正月休みの大人でしたが、次第に子どもたちに人気が出てきたと考えます。


もう一度返って、ソーシャルと同人は相性が抜群でした。しかし、それは東京を中心としたかなり限定的なものでもあります。


■ソーシャル化と同人マーケットの拡大
ウェブ上では、資金まで完結しませんでした。ニコニコ動画というのは、とにかくコンテンツに関しては後回しで(JASRAC関係で問題になって、勝手にやってくださいということだったのかもしれないですが)、自社のプラットホームにかかる利益を追求していました。当然、同人は即売会を開きます。ここで飲み会などを通して、あるいは懇親会などで、最初は音楽のノウハウを共有していましたが、そのうち「編集」 ができる方々がコンピレーションという形でも関わってくれるようになり、気軽に参加できる感じになりました。そして、即売会の規模は大きくなり、かなりの額が動いたと思います。実は、同人でやっていたほうが表に出すよりも利益はとんでもなく出ます。具体的言明は避けますが、本当に大きいです。オリコンなんて比ではないわけです。


■管理不可能でなぜ収益化できたか
方法はふたつ、レコ協を通して販売するか(利益はかなり少ない)、同人で出すか。レコ協モデル、つまり市販のCDには、東京に行けない人がそれでも欲しいという場合に、その感情を埋めてくれますし、セールスがよかったらボーカロイドの知名度向上という点で製造販売元に恩は返せると考えて、それはそれでメリットがあります。しかし、あくまで管理に注目すると、管理不可能状態はコメントなり含め発生しているわけで、どちらかというと後者は大変だけれども、高度で堅実だと考えます。 今更ですが、「ソーシャル」が管理の可不可によらず、ウェブを道具・PRのひとつとして(収益がなくてもいい)、ヒトの手を伝わって価値を現金という形で回収するモデルになりました。これは本当に面白いなと思います。それで、僕自身の疑問も、はれて解決したのです。


■問題点
管理不可能性は、ソーシャルというヒトの手を介して、またCDやDVDという物をやりとりします。そのとき、転売などでは作り手の意思とは別に管理不可能が生まれます。今後それらがどうなっていくのか、ここではまだ解決しないです。


それでも、Winnyの47氏が解決できなかった作り手にとっての管理不可能性の部分は、時間を経て解決しました。この流れを、いま一度見直してみることに意義があると考えます。


Winnyのネットワークシミュレーション(金子・P179)

2011年1月12日水曜日

【おと】 ナイジェル・ゴッドリッジ(Nigel Godrich)に学ぶ「プロデュース」と「制作」

■原点に
まだ1月なのか、ぜんぜん連絡ごとこなしてないや。というわけで、おやつPっても、僕に関しては音楽しかできませんから(しかもよつうちの打ち込みはまだまったくその域に達していない)、そこに再び立ってみます。んじゃ、なんか目標は?ってことで、こんな方がいます。日本であまり人気がないようなので、翻訳した概要なんか出しつつ。

■イギリスのプロデューサー、ナイジェル・ゴッドリッジ
英語版Wikipediaから要点をさらいます。

ナイジェル・ゴッドリッジ
レコーディングエンジニア兼プロデューサー、ミュージシャンで、しばしばレディへの6人目とも
2009年からはトム・ヨークのバンドにも加入している


94年から現在まで
長くレディオヘッドにかかわり、いわゆる「レディオヘッドの音」として知られるものは彼の仕事
彼がジョニー以外の全メンバーより若くしてエンジニアであるのはロックの史上まれなこと
94年「My Iron Lung」に関わって以来の関係であり97年のアルバム「OK Computer」から10年ほど距離を置き「In Rainbows」で再び仕事


その他
…BECKの「Mutations」や「Sea Change」といった代表作を制作
ジョージマーティンの指名でPaulMcCartney「Chaos…」を制作、これも有名


90~93はアシスタントエンジニア
94年RIDEの「Carnival of Light」などでエンジニア
95年RADIOHEADの曲「Black Star」ではじめてプロデューサー
97年あたりから総合的なプロデューサーの仕事が増える

…あとはBECK作品、ポールの名アルバムなどに関係してキャリア積んでます。FenderRhodesやウーリーにテープエコーや反響を加えて立体的にするお仕事に定評があります。なにより、綿密でクリアなビートがもう滅茶苦茶に立体的で、低域も出てハットも聞こえる、という感じです。ミュージシャンを怒らせる技術にも定評か、まあいいや。23歳でRIDEとか世の中滅茶苦茶にしているあたり共感しますが、日本語版Wikipediaはさほど充実していなくて、日本でも海外でオルタナ関連のお仕事していたみなさんからしばしば「ゴッドリッジの仕事は過大評価」というような声も聞こえますが、ルサンチマンでしょう。RIDEもそうですが、94年周辺を境にオルタナの音が激変しています。

もひとつ重要なのは、上の業績はほんの一部で、ゴッドリッジは年間4枚のアルバムをタイトに数年間仕事しているんですね。これは本当に尊敬したい部分です。とはいえ、成功ばかりだったら参考になんてならないわけですが、きっちりと下積みしたり、失敗もしているんですよね。

イギリスはロック ちい覚えた

■平面と立体の交差点
カイリー・ミノーグの「Wow」やRadioheadの「In Rainbows」各曲といったUKサウンドは、ほぼ360度の位相(180から向こうはMS-CSなどで逆位相を作ったり反響を楽器の特性ごとに細かく変えたり、発音する点に揺らぎをもたせたり)になっています。実はその方が音圧もスムーズに上がります。USやラフトレード系はまだそこまでいってないか、立体的に聞こえても音圧が低いだけだったりします。

自分の最近の曲も、ボカロアンセムズに入った例の曲も、平面にしたときの限界まで結構詰め込んでいて、もう180度ではかなりパンパンです(しかも、2点しか使っていないわけで、パターンは多ければ多いほど楽しいことできますよ奥さん!)。日本のエンジニアはあまり楽器ごと、あるいはドラムのパーツごとの位相を裏に回したりだとか、反響まで意識したりはしません(SUPERCARのHighvisionみたいな打ち込みと両立している系統はちょっと別格っぽい)。

打ち込み系はまだ位相を意識して聞いていませんが、日本のロックはほぼ左右平面で構成されています。ギターは左右に振れ、覚えとけ!みたいなー。この間サウンドデザイナーって雑誌を買ってみましたが、まだまだそんな感じですよね。ところがボカロに関しては、もうこの系統をだんだんと無視しはじめています。ってもまだ3年、たった3年いったかいかないかなんですけどね。

打ち込みから現実の音へつながるときに、空間や位相の再構築をしていくのは至極あたりまえの流れといえます。キックひとつに余韻の「グワッ」って音から計算しつくしている打ち込みの音作りから、現実の空間を把握する方法を学ぶことは、技術向上につながります。同時に、音の設定を難解にすることでビジネス上のボトルネックとして思考することも可能です。たとえばサラウンドって国際規格になってますけど、これもちょっとしたボトルネックですよね。

yuukiss先生など「Nostalogic」冒頭のフィールドレコーディングした音では、もう縦横360度座標を志向されています。このあたりの有名Pさんたちは昔から位相でガンガン遊んでいました。なんかこう実用方面というよりは美術館に火をつけるようなあれです。1ヶ月先の音がもう未来で、僕にはおっついて理解することさえ困難ですが、この遊びをMIXやマスタリングにみんな取り入れ始めて奥行き~とか、そんな流れですよね。あとぶっちゃけいうと、反転しただけだったり、ただ人間の頭にあわせてマイク2本立てても、結果として気持ちが悪いです。多分なんか最近の飛び出しちゃう系3Dと同じような感じなので、調整してやらないとリフレクションがダイレクトに耳元でガサガサして気持ちが悪いと思います。

いやもちろん趣味や性別にもよりますけれどもね!

■飛び出たものにはなにかある
あらゆる場面において飛び出たなにか、それは大概「秀でている」わけで、当たり前ですが参考にして、そこから駒を進めなければなりません。ゴッドリッジの場合は、ポール・マッカートニーを怒らせる程度に嫌な奴みたいです。こういうの「困る!」っていうひとが多いですけれども、その結果が昨今ののっぺりしたロックミュージックですよね。なんか先にあげた雑誌によれば、音以前にエンジニアにはコミュ力が求められているそうですが、そんなものは売るために必要なかったわけです。そも、芸能というものは昔からそういうものだったはず。やっぱり、まず音がいいものを聞きたいじゃないですか。裏方に求められるのはそういうもので、コミュ力なんかじゃないと学びました。そも、音楽を本気で聴いている人に対するボトルネックって、コミュニケーションがとれていたら成立しません。夢がないし。ちなみに有名な話ですが、ゴッドリッジをポールに紹介したのはジョージ・マーティンだそうです。イギリスのポップスは歪んでますね。んでもって今ゴッドリッジはアメリカはLAが拠点みたいです。

今飛び出しているものは、確実にボーカロイドです。