2026年9月15日火曜日

【2026年秋】 鏡音リン・レンNTの調声について - おやつP (名誉会長P)

概要

鏡音リン・レン NTの調声に関しては 研鑽を重ねていますが、より一般的で、かつ結果がしっくりくるものを見つけたのでこちらに更新を書いておきます。以前の記事で記したものとは根本的に異なりますが、よりニンゲンのボーカルにも流用できる汎用性のある方法です。


先に、どのくらいになったか、作例を挙げておきます(作例がないとただのズルい作文なので)。


https://piapro.jp/t/J_Fd

https://piapro.jp/t/cUTg

https://piapro.jp/t/55-R


その上で、これがどういう手法かを記しておきます。私の提案するごく個人的な方法ではありますが、鏡音NTユーザーに何らかの参考になればと考えます。また、ざっくりとした方法はこちらをお読みになっていただけたらと思います。


基礎と前提

今回の基本は、「FET (1176)→LA2A」というコンプのつなぎです。これだけで大分効果があると思います。リダクションは、これは教科書的で嫌な表現ですが、これから挙げるコンプをいくつ足しても、トラックでは「6db以内」に留めると上手くいく、と思います。

また、今回の前提は、エディタでの「ベタ打ち」で、マスタリングで昨今のJ-POP程度音圧を上げる場合に有効な方法です。したがって、この記事の想定読者は、鏡音NTを手にして、他者に理解できるように歌わせたいし喋らせたいDTM初心者です。

あくまで私個人の率直な感想ですが、(しばしば網羅的なもので「DTM初心者向け」、として解説されているように)エディタで余計なことを少しでもすると、鏡音NTの調声に関しては大抵ダメになります。一貫してDAWでの音響の編集に徹しましょう。ピアプロスタジオでのVoice Voltageだとか、Vocal Morphingだとかは、今後DTMをやっていくにあたって流用も効かないし、とりあえず無視で大丈夫です。出力する時の音量だけ-6db程度に下げてやると、デジタル的なビビリが出ないので、そこだけ注意してあげてください。

トラックで済んでしまう人もいると思いますが、応用編で「ボーカルバス」についても詳述しておきました。お好みで読んでいただけたらと思います。

それでは、「FET (1176)→LA2A」というコンプを基礎にして、展開していきます。


詳細

・トラック

とにもかくにも「FET (1176)→LA2A」というコンプが今回の基礎です。あとは、せいぜい料理についてくるパセリか、あるいは英語の副詞のような「おまけ」程度に考えてください。

まず、最初は準備です。EQでローカットをします。後段にたくさんコンプを使うので、なにをいっているのか、意味内容を掴むのに不要な帯域をカットします。これで、コンプの誤動作(意図しない動作)も防ぐことができます。どのくらいかは人それぞれですが、とりあえず120Hzまでの低域を切ります(後からある程度音圧を上げる前提ですので、これくらいローカットしておきます)。

次に、ディエッサーです。4.5kHz前後を狭い幅で、メーターを見たときに瞬間的に-9db程度かかるように、強力にリダクションします。これで、鏡音NTのそのまま出力した時のシュワシュワとした感じをかなり抑え込むことができます。これがニンゲンだったらこんな極端なリダクションはしないのですが、どうも4kHz周辺は合成された音声ではよくピーキーになります

ここで、デジタル系のコンプで瞬間的なアタックを削りますOxford Dynamicsを使用しましたが、Logicの標準にもありますし、FabFilter Pro-C 3など、似たようなもので大丈夫です。

ここからが、基礎で提示した「FET (1176)→LA2A」の組み合わせです。Logicの付属コンプでも構わないのですが、UAなど他にいいものがあるので、調べてみてください。

さて、ここで1176系で、大きめのピークを削ります。FETはVCAコンプ(GlueといわれるSSLなどが有名)に次いで動作が速い部類なので、アタック、リリースともに相当「遅め」に設定します。VUメーターを睨んで、-3db程度で戻ってくる感じを目安にリダクションします。

そして、LA2A 系(いわゆるオプトコンプ)を挿します。ここでは、あまりゲインリダクションにこだわらず、-0.5db程度VUメーターが動けばいいと思います。左側にvolumeがあるのが一般的ですが、あまり上げ過ぎると後置するEQなどでピークを超えてしまい、歪みが増える可能性がありますので、少し音量が戻る程度に留めます。

これでも結果はなかなか良好で納得できるのですが、芸の幅は広く持たせた方がよいので、少し欲張ってみます。ここで、鏡音NTの繊細なブレスの部分を上げるために、Upward系(OTTなどが有名)のコンプを薄くかけます。私はWavesのMV2を使いましたが、もしかしたらOTTでもいいかもしれません。

さらに、PultecというEQで、10kHzを3db程度上げて、同時に3db程度下げます。これで、高域のディエッサーの補助になります。また、LA2Aで少しなまってしまった高域を取り戻す役割にもなります。このあたりはもうお好みです。

さて、次にかけるのはAbbey Road RS124です。喋らせるときに、これを入れておくとパワフルかつ、アタックが滑らかになります。なにも弄らずにcutterにして、Super Fuseをオンにしただけですが、効果はあったのでかけてみました。あくまで基本は先に提示したFET1176系とLA2Aなので、これもリダクション目的のコンプというよりは、味付け程度です。この辺り、アナログモデリングなので、ピークを示す赤ランプがつかないように気をつけてください。

トラックの最終段はサチュレーターです。これも薄く掛けて艶を出す程度です。ただし、この後にボーカルバスがあるので、ここで音量を整える形にすると、後の作業が楽になると思います。ハモリがある場合は、ハモリパートがひとつであれば、ステレオで処理し、その後にディレイを片チャンネルだけ20ms程度かけて、整合性をとるのもいいと思います。

・ボーカルバス

ここからは多少の応用編です。ボーカルトラックができたら、ボーカルバスに送ります。先に音量を上げなくていいといったのは、ここでまずゲインを-18dbまで絞るためです。

ここでVCAコンプのSSLを使います。スレッショルドは、ゲインリダクション-2db程度を基準に、VUメーターと他のパラメーターを睨みながら調整します。Make-Upはリダクションで下がった分を取り戻す程度、アタックは30、リリースは1.2にします(Autoでもよさそう)。レシオは2。アタックリリース遅めで圧縮せずに、いわゆるGlueにするというもので、この辺りは鉄板設定です。

次に、Abbey RoadのAR TGです。マスタリングでも使うので、入力はフラットで0dbにしましたが、テープにしたり、インプットを突っ込んだりしても面白いかもしれません。ステレオ設定で(ミッド・サイド処理もできますが、私はこれをボーカルバスではなくてマスタリングで使います)、EQは適当。フィルタはハイパスだけ軽くかけています。コンプはやはりほとんどリダクションをせずに、オリジナルを選んでいます。これは、モダンモードの方が扱いやすいですが、後段で音量を必要としない理由があるので、私はオリジナルにしました。

それで、2段目のディエッサーです。8kHz周辺を軽く削っています。ここで子音が強い場合は、この後にお好みで3段目に12kHz周辺のディエッサーを設置してもいいと思います。マスタリングでこの帯域を設定すると、場合によりストリングスの高域やハットと被るので、個別処理しないとクリアネスが減退するかもしれません。

最後にリミッターをかけます。音量が気に入らない場合はここで一気に上げて、調整します。


最後に

あくまで、作例に基づいた一つの例として受け取っていただけたら幸いです。

あと、トラックの処理で済んでしまう場合が多いと考えます。その場合、繰り返しになりますが、重要なのは基礎で提示した「FET (1176)→LA2A」の組み合わせです。これも、もっとうまい組み合わせがあるのかもしれません。そうしたら、是非教えてください、よろしくお願いいたします。

ついでに初段の方のEQとディエッサーの画像貼っておきます。なんらかの参考になればと考えます。ではでは。