2016年2月26日金曜日

YAMAHA 02r96vcm

 いわゆる「消費者」向けがプロユースの製品に劣るということはありませんが、プロの使用する道具はチートです。正直、いいもん使っとるなわれ、みたいな。そこでおすすめなのが、YAMAHAのプロユースの「中古」です。

 まずコスパです。オーディオインターフェイスにちょっと毛が生えた程度、10万円以内で、スタジオに入っているコンソール、つまり大卓が買えます。私がことあるごとに不良債権だとバカにしているあの大卓です。しかし、200万円の機材を9万とか6万とかで買えるとしたら、ぶっちゃけこれはもう底値であり、大穴です。デカくてうざいけど。

 たとえば、DTMライターおすすめのPreSonusや、ローランドのなんとかキャプチャがおよそ市場価格6万円。PTが15万円から20万円として、高級オーディオアンプは50万円。中古でもさしたる変化はないです。ここに突然の仕事道具が降ってきます。01vであればさらに安くなっていて、今や子供の小遣いで買えます。2496ですが、アナログの複雑さやモーターフェーダー、S/N比など合わせて考えたらこれは十分です。十分どころか、02r96のシリーズであれば基本性能は他を凌駕しています。もちろん、PCなどにつないでインターフェイスとしても使えます。おまけに、専用のDSPカード使えばコンプとEQも満足いくものが入っていて、ついでに03年あたりからは確かテープサーチュレーターまで入っています。ミックスならこれだけあれば正直十分すぎます。もちろん拡張カードまで捨て値で売られているのです。これは、どうなんでしょうね。プラグイン買うより卓買った方が人によっては儲かるっていうね。

 ちなみに、価格が下がった理由は、古今東西稀にみる圧倒的な操作性の悪さと、それを構成する機能のこれまた圧倒的複雑さです。YouTubeで動画見ていると、世界各国で渋い顔しながらモーターフェーダーのレイヤー切り替えをみんな必死に覚えようとしているけれども、正直表情がイラついててどれも笑えない。これは、世界規模でデジタルでのミックス作業というもの自体がおそらく現場に受け入れられずに宙に浮いており、またデジタルミキサーという概念自体がDAWとの関係でこれも宙に浮きがちな上、さらに複雑で頭を捻らないとレイヤードした仮想のフェーダーが理解できないということで、捨て値になってきたのだと考えられます。これにMTRがついて、録音と再生が別のレイヤーで行われるとか、もう地獄ですよね。説明して、ってよくいわれるけれども、なんだかひどすぎる。

 というかPAの現場はそういうヤマハ的官僚制ソリューションではないはずだし、頭をタダでさえ使っていて、その最中にフェーダーのレイヤを切り替えるなんて動作をしていたら、よくある瞬発的な事故(それこそハウリングや返しは瞬発力が必要で、それがそのまま対応の良さと認識されると考えられます)に対応できないでしょう。あれ以上頭使ったら瞬発力が削られるので、PAさんは大変だと思います。もちろんDAWいじってる側にも、これ以上「覚えろ」といわれたら迷惑な話ですし、まして90年代以降のMTRが複雑化した末期にあったように、MTR使う客層にそういうレイヤーの概念を専門教育外で理解させるのも相当酷なのでは。おまけに、法人がやるコンテンツの市場は法人のせいで崩壊していて(自爆)、作ってもコンテンツは売れません。となると、これはコンテンツ系法人ユースの市場が当然、崩壊するわけです。だからコンテンツ業に流れることなく投げ売りになります。マーケットが成立しない昨今です。恐ろしい。これで、高い性能とヤマハの音を誇りながら価格が下がる理由が理解できると思います。そして、往々にして売れているものが素晴らしいということはないのでした。

 次に品質です。音は実用で使えます。特にヘッドアンプはよろしいですし、DA-ADもきっちりしていてADATも2本使える上に(つまりマルチチャンネルでの入出力が楽)、5.1chをTHD品質以上で楽しむことも(なんとジョイスティックまであって、作るのも聞くのも)できる、というものです。AVアンプはセレクタで切り替える必要があります。どんな高級アンプでもそうなのです。しかし、ミキサーならつなぎっぱなしでフェーダー上げて、音が小さかったらプリアンプ入れたり、あるいはパワーアンプ通したら、ちゃんとフェスで通用する程度までいい音が大音量で出ますから、お買い得です。もちろん、ヘッドホンアンプとしても使えますし、気に入らなければデジタルで出して、光や同軸で出力して別のヘッドホンアンプを繋げることもでき、さらにYAMAHA製品なので、外部クロックをつないだりもできます。外部レコーダーにPCやMacを用いてマスタリング担当させておけば、作業的にも問題ないです。

 わかる人にはわかるのですが、デジタルミキサーは、頭は使います。わかってしまうと楽ではあります。けれども、おそらく想定したPAの現場向きでない上に(一足飛びにDAWを使えばむしろ操作性も良く作業も簡易になる)、とにかく複雑でわかりにくいからこそ安くなっているのだけれども。PA業は卓が横に広がっていて、それを視覚よりむしろ耳と瞬発力で対処していくはずで、だからライブに行くと、おじさんが広い卓の前で座って常時スタンバっていることになります。催事でも同じでしょうね。だから、保守的というよりは、デジタル機材の様々な、例えば些細な遅延やフィジカルより先の概念的なDAWだったりvstだったりするものが明確に「地雷」であり、仕事のストレスになる、というのは最近よくわかります。最近はどうか知らないけれども、概ねどこかそんな雰囲気は感じますがさて。

 最後に、やはりミックスは重要なので、フェーダーはフィジカルにいじった方が最終的な音に違いが出るということです。いくら自動化しても、結局そこは人間がやっているわけです。これはどんなによいリミッターを導入し、どれほどサチったところで、結局全て自動ではできないというところにかえるだけの話です。そして、人間のボーカルを含む生音の室内録音には、やはり卓です。どうせ買っても置いとくだけで持ち出さない、って人には、10万ならそこまでの高額ではないので、サブの2496インターフェイス買うつもりで買っちゃっていいと思います。あるいは、デジタル入出力だけの何かがあればそれもそれでメインにはいいですが、例えばドラムとか、同時多発的な音を混ぜるには、ミキサーとDSPでのEQ処理がいろいろ楽です。あと、それなりに無駄にでかいので(悪いことではない)メンテはある意味楽そうですね。

 何より「安い」ので、注目しています。値段の安さもさながら、実用と費用の比率としてのコスパも大変よいです。7-8万で(外で)業務で使えたら色々最高だろうなあ。変な話、数台壊せるし、教育にはもってこいかな、とか。夢見すぎかしら。